冷蔵庫のおはなし

大学を卒業して 都内で一人暮らしをはじめた時 冷蔵庫を買ってもらった。

見た目だけで選んだ。
白くて  優しく角張っていて お豆腐みたい。シンプルに華奢な取手がついていた。

はじめて住んだ家は 小さなワンルーム。あまりに狭かったので 今では考えられない配置なのだけど。夜 ベッドで横になると 頭の上で冷蔵庫が ブーンと鳴っていた。当時お付き合いしていた人は 泊まりに来ると かならず冷凍室に ひとつ ハーゲンダッツを置いていった。

初めて勤めた会社を辞めて、実家に戻った時には本棚になった。すでに家族の冷蔵庫が鎮座していたので、コンセントは差し込まれることはなかったけれど。かわりに どっさり 料理本ばかりを詰め込んでいた。読み漁っては 味や雰囲気を妄想した。母を実験台に晩ごはんを作るのが いちにちの楽しみだったな。

その後、一年程 東京の実家に本棚のままの冷蔵庫を置いて、遠く離れて過ごした。

それから高知で暮らすことになり、本来の働きをしてもらうために冷蔵庫を連れてきた。新しい家は、カウンターのあるタイル貼りの可愛らしいキッチンがあって、ビニール素材のレトロな緑の床だった。白い冷蔵庫は今まででいちばん素敵に見えた。

最初 部屋にはわたしの他に誰も居なかったけれど、少しずつ 友達でき 恋人ができ、遊びに来るようになり、料理教室のようなこともした。その度に わたしはいろんな食べ物を作った。いつでも食べられるよう常備菜を作り置いたし、サプライズの誕生日ケーキも隠した。野菜はもちろん、育てているパン酵母も糠床も自家製味噌も、姉が作った梅干しも、貯蔵させてもらった。それはどっしりと たくさんの安心感を与えてくれた。

そんな冷蔵庫とも 今日でお別れすることになった。引っ越すことにしたのだ。最後に、撫でるように体ぜんぶを拭き上げた。お願いしていた家電引取りの業者さんは 時間どうりにやって来て、てきぱきと作業を進め 軽々とトラックに積み上げた。

あまりにも あっさりだった。

業者さんが帰った後、冷蔵庫を置いていた ぽっかり空いたスペースに残ったほこりを片付けながら、静かに泣いた。

ほんとにお世話になりました。
写真も撮らずにごめんね、せめて文章に残しておこうと これを書くね。
ありがとう。



この記事を書いたひと:白倉今日子

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